Storyteller
東京家政大学 児童学部 児童学科
武田(六角) 洋子
臨床心理士・公認心理師として親子支援の現場に長年携わる。現在は大学で臨床心理学を専門に、保育者養成に従事。子育て支援や教育相談をテーマとした授業とゼミを担当している。
「絵本のまち板橋」が力を合わせて届ける一冊
子どもが抱える不安や迷いは、表に出にくいことがあります。そんな子どもたちと周囲の大人のために板橋区が制作したのが、絵本『ぼくとモヤモヤ』です。東京家政大学の武田先生はこの絵本を監修し、ゼミ生たちが制作に参加しました。
「支援を必要としていても声を挙げない子どもが多いことに、ゼミ生も私も課題を感じていました。そんな折、板橋区から『SOSの出し方に関する教育』としての絵本制作への協力募集があり、社会的な課題に絵本でアプローチする板橋区ならではの発想に魅力を感じて、応募を決めました」
制作にあたり、板橋区職員とゼミ生がキャラクターやストーリーを検討し、区にゆかりがある編集者の細江幸世さんと絵本作家のまえだよしゆきさんによって、それらがブラッシュアップされました。区内企業である惠友印刷株式会社と大村製本株式会社がそれぞれ印刷・製本を手がけ、板橋区の力を結集して作られています。
「『大人に相談していいんだ』と子どもたちに感じてもらえるよう、絵本では大人から子どもに声をかける様子を描いています。また、子どもから相談を受けた大人の側も一人で抱え込まないでほしいという思いを込めて、タイジュさんとダイチさんという二人の大人を登場させ、力を合わせて子どものSOSを受けとめるストーリーになっています」
制作から2年、フォントなど細部までこだわった絵本は2025年7月に完成しました。さっそく区内での活用が始まり、常盤台小学校の4年生を対象に実施した出張授業では、子どもたちが読み聞かせに真剣に耳を傾けてくれたといいます。
「授業後に走ってきて『どこで読めるの?』と尋ねてくれたり、アンケートに『また読みたい』と書いてくれたりと、とても嬉しい反応がありました」
こうした手応えを踏まえ、武田先生は板橋区とともに小学校教諭向けのモデル授業プランの作成を進めています。また、10月の板橋区民まつりでは武田ゼミの学生が子どもたちに読み聞かせを行い、武田先生が保護者向けに絵本の趣旨を解説しました 。制作に携わった保健師の窪田さんは、子どもと大人双方にとって、事態が深刻になる前に気づきを促せる「一次予防」になると期待を寄せます。
子どもが「モヤモヤ」に直面したとき、安心してそれを大人に相談できるまちであるように。「絵本のまち板橋」で生まれたこの絵本は、子どもと大人それぞれの背中を、温かく押してくれる一冊です。
私の理想のいたばし!
子どもも大人も孤立せず、地域や学校、職場などで誰かと温かな関わりを育んでいける、つながりあふれるまちになってほしいです。
私のちょこっとSDGs
移動中、大きな荷物やベビーカーで大変そうな親御さんには、できるだけ声をかけて手助けするようにしています。親御さんが子育ての負担を一人で背負わないよう、応援の気持ちも込めて積極的に関わるようにしています。