Storyteller
株式会社ちょこっとワーク 代表取締役
高野 剛
家族の介護経験を通じて社会貢献を志し、2020年に株式会社ちょこっとワークを設立。複数のITベンチャー企業に勤め、経営を担った経験を活かして、高齢者をはじめとする多世代が豊かに暮らせる社会の実現を目指している。
仕事を通じて、持続可能なコミュニティを作り出す
定年後の高齢者などが、たわいのない話をしながら手を動かせる、まちの中の居場所――。板橋区高島平中央商店街の近くに、そんな空間があります。株式会社ちょこっとワークの作業場です。ちょこっとワークに会員登録をした参加者たちは、都合の良いタイミングで作業場を訪れ、定期購読誌の梱包やシール貼りなどを行います。
「ワークといってもノルマやシフトはありません。最も大切にしているのは、高齢者の居場所を作ること。家族の介護をきっかけに『高齢者が、人とのつながりを持てる場が充実すれば、人生の後半をもっと豊かに生きることができるのでは』と感じました。けれども、現役を離れた世代にとって、そうしたコミュニティはまだまだ限られています。そこで、定年後も継続的に人と関わりを持てる場として、『働くこと』をベースにした新しいコミュニティをつくろうと考えました」
現在、160名以上の会員が精力的に活動しており、最年長の方は92歳。人との交流によって、元気に過ごせる時間が長くなり、健康寿命が延びると高野さんは考えます。
「働くことは、すなわち自身の価値を生み出すことでもあります。定年を迎えた高齢者や障がいのある方、事情により長時間の労働が難しい方など、今の社会の仕組みでは雇用の対象にならない方にも作業をお願いすることで、新たな価値が生まれると同時に、その方の自信が育まれます。参加者の喜ぶ顔を見ると、大きなやりがいを感じます」
2020年にはコロナ禍で一時的に作業場を閉鎖しましたが、参加者からの強い希望に応えて、感染拡大が落ち着いたタイミングで活動を再開。2024年10月には作業場を移転拡張し、キッチンスペースも設けました。作業する時間の他にも、皆でご飯を作って食べたり、誕生日会をしたりといった、身内のようなコミュニケーションを大切にしているそうです。
「高島平団地は、区内でも特に高齢化率が高いエリア。だからこそ、これからの社会のあり方を示すパイオニアになれたらと考えています。まち全体が大きな家族のように支え合う、誰もが安心して暮らせる持続可能な社会を目指しています」
今後、より多くの区内企業と連携して活動を拡大したいと語る高野さん。板橋区とも協力し合い、地域全体で多世代がつながるまちづくりを進めたいと話してくれました。高島平から、新しい社会の形が着実に生まれ始めています。
私の理想のいたばし!
多世代が支え合う持続可能な社会のあり方を、活気あふれる高島平から発信していきたいです。
私のちょこっとSDGs
カフェのような感覚で気軽に立ち寄ってもらえるよう、作業場にキッチンを併設したり壁紙をおしゃれにしたりと、居心地の良さを意識して工夫しています。
Profile
株式会社ちょこっとワーク
『働く』ことを軸として、人と関わり豊かに過ごせるコミュニティ創りを行っています。
国などの財源に頼らず、持続可能な事業として参加者の生み出す価値で成り立たせる事にチャレンジしています。